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短編合評「達也が嗤う」「薔薇荘殺人事件

 

今回の二つの短編の合評は、今年の三月に、●川が●田さんに「面白かったです!」と感想をお伝えしたことがきっかけで例会にてとりあげていただくことになりました。

とりあげていただきありがとうございました(「薔薇荘殺人事件」をやりたいと言っていたのですが、「達也が嗤う」もやりましょうと助言をくださったのも●田さんでした。ありがとうございました!)。

●川は、例会で合評を行う日を三月からたいへん楽しみにしておりました。
というのも、この二作、
犯人をまったく当てることができなかったからです!!!!

作者のてのひらの上で遊ばれてしまう、この悔しさ、恐ろしさ!!!!


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勝手ながら、ぜひ金沢ミステリ倶楽部(KMC)のみなさまにも●川と同じ気持ちを味わっていただきたい!!!と思っておったのです。
さて、KMCのつわものたちは、●川と同じように、悔しい気持ちを味わうことになってしまったのでしょうか…?!運命やいかに?!

といったところで、下記、ご参加くださった方々の感想になります。以下敬称略させていただきます。
ネタバレ全開ですので「達也が嗤う」「薔薇荘殺人事件」を未読の方はご注意ください。

 

●田敬 再読。
初読は『ヴィーナスの心臓』。
「達也が嗤う」:性別誤認トリックを犯人当てでやるのがすごい。逆さにして読む、うらわがやった、が面白い。
「薔薇荘殺人事件」:「知井を殺した犯人は」を覚えていて、田代が犯人だと思い出した。

プロローグで田代を犯人じゃないようにミスリードしているのがすごい。二作とも犯人は分からなかった。
「達也が嗤う」は大好きな犯人当ての作品。


●田 
「達也が嗤う」はよく話題にのぼる作品で、不思議なタイトルだなあと思っていた。
読んでみると、そんな仕掛けになっていたんだ、と納得した。
朗読会の席上で読まれたとのことだが朗読で犯人が判る人はいたのだろうか(二名だけだったそうです(●川))。

目で読めば分かるかもしれないが。語り手が犯人はフェア?(←嘘は書いていないからフェアではないか(●岸))



●西 初読。
「達也が嗤う」は名前をよくきくのでどんなものだろうか?と思っていた。
二作とも犯人を当てようと考えた。

「達也が嗤う」:犯人は女。男が女に違いないと思った。
が、語り手が女だった。
タイトルがすごい。
こういう書き方あるんやと思った。

薔薇荘殺人事件」:色盲はわかった。
だから色盲の人間を消去法で犯人候補から消した。
田代は冒頭でブイを赤く塗っていたので色盲じゃないと判断してしまった。
これはすごい!登場人物が「たちつてと」に並んでいる。

除外されるのは鑑定士と女(←立川妙子のことでしょうか?(●川))だけ(「達也が嗤う」は「あいうえおかき」になってる(●岸))。
「薔薇荘殺人事件」という題名になんかあるかなと思ったら、なにもなかった!それなのに、「知井を殺した犯人は?」で、また逆さ読みかよ!考えれば考えるほど、鮎川さんの術中にはまっていった。


●田直 
犯人は二作とも当てられなかった。
「達也が嗤う」:主人公が犯人で性別を勘違いさせる。
性別が逆じゃないかと意識していれば、犯人を当てられたのかなあ。達也が殺されたときになんかあると思って意識していた。
ヒントはアンフェアなのか?(←お遊びだからいいのでは?(●田敬))


●口 
「達也が嗤う」を読んだときに、嫉妬深い主人の奥さんと「私」が普通に話しているのを見て「私」は女だと気づいた(犯人も女だとわかった)。
むしろそれしか思い浮かばなかった。

それで安心してしまった。自殺だって気づかなかった。
銃声は実際の銃声ではないと思った。
拳銃がどこからも出て来ない。
この時代だからいろいろ方法があるのかと深読みしてしまったら、わからなくなってしまった。浦和がやった、を読んでもあまり感動しなかったが、薔薇荘の田代には感動した。

「薔薇荘殺人事件」:以下のように勘違いした。
田代さんが絵を描いていたので、絵がヒントだろうなと思った。
絵は顔を描いているのではないか、ブイを赤く塗ったのは口か、グレイは口髭?もみあげ?とか考えていたが、真相は全然違った。
読み終えたときに鮎川哲也さんの本は有栖川有栖さんに似ていると思った。影響を受けていると感じた。


●谷 
「達也が嗤う」:読み終わったときに今まで読んでいたものと雰囲気が違うと思った
物質的なことでなく、言葉遊びをしている。

達也が嗤うを逆向きにしたり、解決編を読み進めるたびに騒いだりびっくりしてたら、妹から心配された。
すごく面白かった。
ピストルをどうやって隠したのかとか、鞄をどうやって手に入れたのか気になった。

「薔薇荘殺人事件」:県立図書館からミステリージョッキーを借りて読んだ。
言葉の表現の仕方が面白いなと思った。逆さにしたら犯人がわかるけど、「う」と「を」はこじつけだと思った。
コールマンひげがなにか分からなかった。
サンダルは柔らかそうなものを思い浮かべてしまい、サンダルで人を殺せるんだと思った。


市● 
争い事は嫌いなので、最初から犯人当てを挑まずにやっている。
達也が嗤う」はこのミスのオールタイムベストの短編部門で三位になっていた。

達也がどこかでわらうのだろうと思ったが、わらう前に殺された。江田島ミミに騙された竜之介を達也がわらったのかと思ったら違った。
落語的なオチやった。
事件を解決したのは、兵太郎。寝とられたくせに名探偵か!うまい。

「薔薇荘殺人事件」:田代は、田代まさしのように善人面してのぞきとかしてるから、田代孝一が犯人だと思っていたら田代が犯人だった。
星影がロシア語で刑事を罵倒している。
黒死館でた!悪夢。
一生のうちにもう一回、黒死館に挑みたい。

●渕 
「達也が嗤う」:「妖婦の宿」と「達也が嗤う」はどっちが先なのかなあと思った。
「妖婦の宿」は密室トリックの手がかりが弱いので、「達也が嗤う」のほうが出来がよい。

中学の頃、高木彬光が好きだったがそのころは「妖婦の宿」がいいと思っていた。でも「達也が嗤う」のほうが遊び心たっぷり。
「薔薇荘殺人事件」:星影さんが出てきたんですけど、いろんな意味で深読みしすぎて迷宮に入ってしまった。

論理パズルを読むとき、自分の思い込みで読むと正解に到達しないと思った朗読で犯人当てができるものか?昭和30年代、朗読でやるっていうハードル高いことやってたんだなあと思った。


● 
「薔薇荘殺人事件」、「達也が嗤う」の順番で読んだ。
薔薇荘殺人事件」:犯人分からなかった。名前が反対になっていたから次は騙されないと思って、「達也が嗤う」を読んだら、犯人を当てることができてしまった。


●岸 
「達也が嗤う」:初期に書かれた作品であることに驚いた。
記述者が犯人。性別トリック。自殺が他殺。読者への挑戦のところにもトリックがあった。

デビュー前(←『黒いトランク』が発表される前に「達也が嗤う」は脱稿されたそうです(●川))だから、ここまでのもの書けたのか?オカマがいたら、普通オカマが犯人。
髭抜きの手がかりが弱いとあるが、オカマが犯人でないとしたらすごい。

「薔薇荘殺人事件」:ミステリージョッキーに書かれていることだが、田代孝一は偽名だけど、日記だからそのまま使っていい。
アンフェアではない。二作ともメタじゃない手がかりが提示されている。基本に忠実。
遊び心いっぱい。

『鮎川哲也読本』に芦辺拓が意外な手がかりを追求したと書いている。
犯人だと当てられても痛くもかゆくもない。論理的に当てないとダメ。
すんごいよくできている。

「誰の屍体か」もすごい。
完璧。
ただただ感服。
みんな真似しようとしている。


●川
KMCのみなさんが鮎川先生に騙されてくれて、うれしかったです。『りら荘事件』おすすめです

 

二作を未読の方がここをご覧になってるか分かりませんが、面白そうだな、読みたいなと思われたら、ぜひ読んでみてください。
では良いお年を!


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