こんなお約束事
テーマ:ショートショート
探偵はいきなりすっとんきょうな推理を披露し出した。
「ちょっと、あんた」と俺はその話を遮ろうとしたら
警部に止められた。
警部は人差し指を口元にあてて俺に黙るように指示した。
俺はちょっとむかついた。
これは俺が刑事になって初めての殺人現場だったのだ。
それなのに、なぜこんな男のー。
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私が帰宅すると、娘が浮かない顔をして本を眺めていた。
「どうかしたか」
「この本、もらったんだけど」と娘は本を私に差し出した。
しっかりしたハードカバーの本で、白い表紙には黒字で
『僕の背に隠された愛』とタイトルが書かれていて、
著者名は大空翔太となっていた。
「おおぞら、しょうた?」
「今つきあってる彼なんだけど、誕生祝って、この本くれたの」
奥付を見ると、今日、娘の誕生日になっている。
仕事を失い、彼女と別れ、貯金も底をついた。
もう死のう、という時にドアのベルが鳴った。
ドアを開けると、そこには俺がいた。
だがいつも鏡で見る自分より少し年を取っているようだ。
「だれ?」
「40歳のお前だよ」
「えっ」
「10年後のお前だよ。しけた顔してるな」
そう言うとずかずかと部屋に上がりこんだ。
「さて」とマンションの一室に容疑者を4人集めて、私は言った。
「犯人はこの中にいます!」
私は名探偵。
これから華麗な推理を披露して、
この中から犯人を指摘する。
まさにこれから大団円なのだ。
「死体の殴られた位置関係から、犯人は右利きだと推理できました。
そこで奥さんは左利きなので除外できます。
また犯人の身長も170以上と推理できたので、
娘さんも除外できます。
そして残された爪楊枝から犯人は息子のあなたしかいない!」
決まった!